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医師が安心して働ける職場づくりのために ~働き方改革に伴う収入減と制度見直しのポイント~/約3分で耳ラーニング

  • 業種 病院・診療所・歯科
    介護福祉施設
  • 種別 レポート

2024年4月に本格施行された医師の働き方改革は、長時間労働の是正に一定の成果を上げた一方で、医師の収入減という新たな課題も浮上しています。

人事院の調査によれば、若手医師や医長クラスにおいて月給の減少が報告されており、これが医師のモチベーション低下につながる可能性があります。

業務成果を正当に評価し、収入に反映できる制度の構築を

月給が減少した背景には、時間外手当が適正に 支給されたことにより病院の経費が増加した一方で、追加の財源が確保できず、基本給の調整を余儀なくされたことが挙げられます。このような「働き損」ともいえる構造は、医師が長時間労働の削減に消極的になる悪循環を招く恐れがあり、抜本的な賃金制度の見直しが求められます。

具体的には、従来の「年功序列」や「労働時間」に基づく賃金制度を見直し、診療による収益、チーム医療への貢献、後進育成といった多面的な要素を評価軸とする仕組みへの転換が必要です。これにより、医師の業務成果を正当に評価し、収入に反映できる制度の構築が期待されます。

キャリアの継続性と報酬の透明性を両立できる構造に

たとえば、「経験年数に応じた基本給」「役職ごとの職務手当」「人事評価に基づく評価給」の三層構造とすることで、キャリアの継続性と報酬の透明性を両立できます。評価給は加点方式とし、減額の上限を設けることで、前年より大幅に収入が下がらないよう配慮することも、医師が安心して働ける環境づくりに寄与するでしょう。

一方で、医師のシフト短縮や夜間当直の削減が進む中、医療現場では、救急搬送の受け入れ困難事例の増加や手術件数の減少など、医療提供体制への悪影響も顕在化しています。特に、常勤医の不在時間をいかにカバーするかが喫緊の課題です。

「賃金体系」と「組織体制」の両面から改革を進める

こうした状況の中で、管理職には優れた診療技術だけでなく、部下の労働時間管理や業務効率化、チーム全体の生産性向上といった、経営的視点を持った役割が求められます。たとえ自己研鑽や研究活動であっても、過重労働につながる場合には、安全配慮義務を踏まえた適切なマネジメントが不可欠です。

そして、働き方改革を着実に進めつつ持続可能な医療体制を築くためには、「賃金体系」と「組織体制」の両面から改革を進める必要があります。医師の納得感を得られる公正な評価制度と、管理職がリーダーシップを発揮できる支援体制の整備が重要です。医療機関全体で一体となり、医師が安心して働ける職場環境を早急に整えることが求められます。

病院の人事制度・組織開発と言えば、日本経営!

今回の解説

馬渡美智(まわたり みさと)
株式会社日本経営 組織人事コンサルタント

従業員数500名規模の事業所で、総務・人事業務に従事した後、日本経営入社。労務管理体制の調査・整備業務、組織活性化支援、人事制度の導入・運用支援、管理職研修、職員研修等に従事している。自治体の医療人材の流出入に関する調査も実施。社会福祉協議会、各種団体等での講演やセミナーも多数行っている。社内においては、子育てをしながら経営コンサルタントとして働くモデル人材として活躍。社会保険労務士有資格者。

株式会社日本経営

本稿は掲載時点の情報に基づき、一般的なコメントを述べたものです。実際の経営の判断は個別具体的に検討する必要がありますので、専門家にご相談の上ご判断ください。本稿をもとに意思決定され、直接又は間接に損害を蒙られたとしても、一切の責任は負いかねます。

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